1学期終業式式辞より
初めてエアコンが稼働した体育館の終業式において、私から以下の話をしました。
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今日は、今月3日に20年ぶりに発行された新しい紙幣にまつわって、話をします。
皆さんは、新しい1万円札、5千円札、千円札のそれぞれの肖像画が誰になったか知っていますか?
1万円札は、多くの企業の設立に関わった実業家で、「日本における資本主義の父」といわれる渋沢栄一。5千円札は、「日本における女子教育の先駆者」である津田梅子。千円札は伝染病予防や細菌学の発展に貢献し、「近代日本医学の父」として知られる北里柴三郎です。3人とも19世紀後半から20世紀初め(明治・大正から昭和の初期)に活躍し、日本の近代化を支えた先駆者と言えます。
さて、その中で5千円札の肖像となった津田梅子ですが、1871年(明治4年)に6歳で日本初の女子留学生として、不平等条約の改正交渉のために派遣された使節団の一員としてアメリカに渡りました。そして、11年間アメリカで教育を受け17歳で帰国しました。
帰国後は、女性の自立を目指して女子教育に情熱を注ぎ、1900年(明治33年)に女子英学塾(現在の津田塾大学)を創設しました。津田梅子は、日本の女性の地位の低さにとても驚き、嘆いたと言われています。なぜならば、当時の女性は、16歳ごろまでに結婚して家庭に入るのが当たり前とされていたからです。
ちなみに、和泉高校は、府内4番目の高等女学校である泉南高等女学校として1901年(明治34年)に創立され、今年で124年目になります。したがって、津田梅子が1900年に創立した女子英学塾と同じ時代にできた、泉南地域における女子の中等教育機関の先駆けと言えます。
さて、津田梅子が120年以上前に目指した「日本における女性の自立や地位の向上」はその後どうなったのでしょうか。
みなさんはquotaという英単語を知っていますか?quotaとは「ノルマ,割り当て」という意味です。
Quotaは、輸出入などの割当量といった経済分野で主に使われていた単語ですが、近年では、政治においてリーダーシップを発揮する、女性の政治家の割合などを決める制度などを意味する「クオータ制」という意味で使われることがあります。
このクオータ制ですが、国連が提唱するSDGsの持続可能な開発目標の一つ、「ジェンダー平等を実現しよう」の中にある、「政治や経済や社会のなかで何かを決めるときに、女性も男性と同じように参加したり、リーダーになったりできるようにする」というターゲットを実現するために、今注目を浴びています。
たとえば、先月、メキシコの大統領に初めて女性が就任したというニュースが話題になりました。男性優位の文化が強いと言われるメキシコですが、1996年の選挙法改正で、候補者の30%を女性とすることを政党に求めるクオータ制が導入されました。そして30年近くたった現在、メキシコの国会議員はほぼ男女同数になっているそうです。このような流れの中で今回の史上初の女性大統領が誕生したと報道されました。
では、日本はどうでしょうか。先月、世界経済フォーラムが発表した報告書によると、日本は調査対象となった146カ国のうち118位で、主要7カ国(G7)では最下位だということです。諸外国の国会議員に占める女性の割合は、この30年で大きく上昇していますが、2022年における日本の国会議員(衆議院議員)に占める女性の割合は9.7%であり、国際的に見ても非常に低い水準となっています。
津田梅子が目指した「日本の女性の地位向上」は残念ながら、まだまだ道半ばと言えるのはないでしょうか。
このクオータ制、日本では政治などの分野ではこのように進んでいないのですが、大学入試においては最近取り入れられるようになってきています。特に理工系分野で女子学生の比率が低いことから、学校推薦型や総合型選抜において、クオータ制を導入し、女子学生の比率を増やすことが始まっています。たとえば、国立大学では今春の入試で金沢大、名古屋工業大、大分大、熊本大などで女子枠が広がりましたし、来春には東京工業大学が総合型・学校推薦型選抜の女子枠を今年度入試の58人から149人へ大幅に拡大するのをはじめ、新潟大、滋賀大、和歌山大などが女子枠を新設または拡大をするということです。
クオータ制では入試の公平性が保たれないという意見がありますが、さらに多くの女子が理工系の分野を学び、多様性が向上する社会を作っていくためには、このような入試におけるクオータ制は必要だと私は思います。ある大企業の幹部は、「イノベーションの創出には研究分野の多様性の向上が不可欠である」とも言っています。本校でも多くの女子生徒の皆さんが理系科目を選択していますが、さらに多くの皆さんが、男子生徒も含めて、理系分野に進学し、SDGsの進展に貢献してくれることを願っています。
今日は、紙幣の話から始まり、津田梅子の生涯、女性の国会議員の割合、そして女子生徒の理系分野への進学について、話をしました。夏休みを機に、皆さんが社会の様々な課題に関心をもつこと、そして、それを解決するためにしっかりと勉強をしてもらうことを期待したいと思います。
7月19日
